中国外食産業レポート

外食産業の概況

中国では経済発展と共に都市部の所得水準が向上し、当初は上海や北京に代表される沿岸部の一級都市を中心に外食産業が急速に発展したが、現在では二級都市から三級都市にも市場が拡大してきており、高度な成長を遂げている。2011年、中国外食産業の売上高は合計2兆0543億元に達し、2010年より16.9%増加し、既に日本の外食産業の市場規模を超えたと考えられている。一方、中国の飲食企業は中小規模のものが大半を占め、90%以上は小企業で、2010年の時点における経営規模上位100社の売上高の合計は僅か市場全体の9.5%でしかなかった。世界の有名な飲食企業と比べて中国の飲食企業は依然として規模、利益、管理、経験の各方面でまだまだ大きな格差がある。

現在、中国政府は、内需拡大政策を推進しており、また外資系企業を内陸部に誘導するなど、内陸部と沿岸部の所得格差縮小に向けた施策も実施しており、今後、内陸部においても市場規模は堅調に拡大していく事が予測される。

また今後、外資系の外食企業が多数進出するに伴い、国内外の飲食企業間の競争がいっそう激しくなると予測され、規模の経済が働き経営効率が高い連鎖経営(チェーン展開)の優位性がいっそう顕著になると見られている。また単純な価格競争に陥らないためにも、品質、サービス、食事環境、食品安全などの諸要素を改善し、ブランド力を高めることが飲食企業の存続を決定する鍵となると思われる。

外食産業の課題点

・食材の調達
飲食業に食材を提供する中国の卸売業者は、カテゴリー毎の零細専門業者が多いという特徴があり、一般的に多数の卸売業者と取引する必要があり、このため食材供給が不安定になったり管理費用が高まるというデメリットがある。(反対に一極集中化リスクを回避できるというメリットもある。)

また、日本では当たり前のように手に入る加工済み食材も現地ではそれ程普及しておらず、入手が困難な事があり、自社で調理するか、現地の食品加工業者等に詳細な指示を与え、委託生産する必要があり、手間がかかる。

また日本産品(特に肉類や野菜などの生鮮食品)の輸入の際に、輸入規制がかかる事があり、調達が困難になる事がある。

さらに物流体制の整備も不十分であり、食材の安定供給や品質の維持が難しいなど、様々な課題点があり、十分な食材管理体制を構築する必要がある。

・厨房設備の調達
コスト面や仕様の違い等から、日本の厨房設備を中国に輸入する事は効率的ではなく、進出企業は現地調達を模索する事になるが、日本で厨房設備を発注した場合、一般的に厨房設備メーカーが厨房の仕様などを決めるが、中国メーカーでは、こうしたサービスがないところが多い。そのような場合、外食企業は自分の必要な設備を考えつつ現地で調達できる厨房設備を当てはめていくという作業を行うことが必要になる。また現地調達できる厨房機器のスペックが要求される基準に満たないことも多く、現地での代替品を見つける事が困難であるケースも多い。

・慢性的な人材不足
中国では、能力主義が浸透しておりより高い評価を求めて転職する傾向があり人材の流動性が高いが、飲食店の人材は転職が比較的容易であり、特に流動性が高い傾向があり、モティベーションを維持する管理体制を構築しないと、人材確保が困難になりつつあり、同時に人材の安定供給のための施策が重要となる。

・不正行為対策
レジで売上をごまかしたり、仕入れの際に秘密裏にリベート等をもらうなど従業員が不正行為を働くケースが常習化しており、これらの管理には十分な注意が必要となる。

・ノウハウの流出
前述の通り中国では人材の流動性が高く、差別化の鍵となるノウハウが流出するリスクも高い。長期的に優位性を維持するためには、ノウハウ流出予防のための施策を十分に講じておく事が肝要である。

・地域間格差
中国では日本とは異なり、食習慣、所得、流通網等に関して地域間の格差が非常に大きい事が特徴である。よって、日本食の持つ高品質で安心の出来るブランドイメージを維持しつつも、各地域毎にローカライズを図る必要がある。

・煩雑な行政対応
中国では行政対応が非常に煩雑であり、許認可をはじめとする手続きにも多大な労力と時間を要するし、しばしば人治的な行政判断が行われるため、行政当局との良好な関係構築を図らないと、開業予定が大幅に遅延し、大きな損失となる可能性もあり注意が必要である。

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