中国IT関連産業レポート

中国IT産業のマクロ動向

IT産業はそのイノべーティブで高付加価値な特性によって、今後の世界の経済成長を維持する最も重要な手段とされている。中国においても例外ではなく、国内外の企業が相次いで参入し、特に近年の外資系企業の積極的な直接投資によりIT 産業はここ10年間急速に成長し、2005年以来、中国のIT市場は年15%以上の成長率で発展してきた。中国工業信息部のデータによると、2011年度中国IT産業の総売上高は9.3兆元で、2010年より約20%成長し、実に中国のGDPの2割程度を占める巨大産業となった。そのうちIT製造業(ハードウェア)の売上高は74,909 億元(前年より17.1%増)、ソフトウェア産業の売上高は18,468億元(同35.9%増)であった。

中国科技部のハイテク産業統計によると、ハイテク産業におけるIT製造業の占める割合は約75%に達しており、このことからも同産業の重要性が伺える

次に主要情報機器の生産量の推移をみると、PC(特にノート型)及び携帯とその周辺機器の伸びが顕著であり、2011年度のPCとその主要部品である集積回路の生産量は、2005年比でそれぞれ3.96倍、2.71倍と急増しており、携帯電話も3.73倍と急拡大している。

現在、中国はこれら情報機器の生産量で、断トツで世界一となっており、2010年度で世界のPCの約98%、携帯電話(スマートフォン)の51%のシェアを獲得している。

このようなIT製造業の発展により、2011年度の携帯電話を含む電話普及率は94.2%、携帯電話は73%、インターネットは、38.3%に上り、携帯電話及びインターネット利用者はそれぞれ、94,085万人、51,300万人となっている。

また、これらハードウェアの普及に伴い、近年、ソフトウェア産業が急速に発展しており、2011年度のソフトウェアの売上高は18,468億元となり、2007年度の売上高7,572億元に比し2.43倍となり、年間約25%のペースで急激な成長を遂げており、なかでもインターネット関連産業の成長は目覚ましいものがある。

業界全体として、知的財産権の保護、コア部品(中間財)の輸入依存、人民元高、人件費上昇等、様々な課題を抱えているものの、内陸の三級都市等の発展により国内需要が旺盛な事から、今後も当面の間は、持続的な発展が予測される。

特に中央政府の5カ年計画で重点産業とされた次世代ITである「三網融合」(通信網、インターネット、有線テレビ網の三大ネットワークを統合し、音声、データ、画像など総合マルチメディアの通信サービスを提供できるようにすること)、「物聯網」(Internet of Things,中国版ユビキタス)、「クラウドコンピューティング」の大幅な規模拡大が見込まれている。

中国IT産業の分野別動向

・Eコマース(電子商取引)市場
中国のEコマース(EC)市場は、近年劇的に発展し、2011年度の市場規模は7,666億元と対前年比66.3%の成長となった。またI-RESEARCH社によると2013年度には15,700億元程度となる試算であり、米国EC市場規模を抜き、世界首位に躍り出ると予測している。

また今後、三級都市での市場が急速に拡大するとみられ、EC市場の規模は2015年には2兆5,000億元を突破するとしており、当面の間、高成長が続くと予測している。

2011年度のEC市場のビジネスモデル別の内訳は、CtoCが5,916億元、BtoCが1,750億元、旅行サイトが1,730億元であったが、今後、BtoCのシェア拡大が予測されている。

運営母体別では、中国のEC市場においてはアリババグループ(阿里巴巴集団)が圧倒的に強く、淘宝網(Taobao、CtoC)と天猫(Tmall、BtoC)でネットショッピング市場の約8割を占め、Tmallと京东商城(360buy)でBtoC市場の70%を占めており、独占状態と言える。

商品別では、特に食品・化粧品・アパレルが急激に伸びているが、幅広い商品が購入されている。まだまだ大型の総合ECサイトが主流だが、今後は米国や日本のように専門特化型のECなどが勢力を拡大する可能性が考えられる。

・ネット広告市場
易観智庫のまとめによれば、2012年通年の中国のインターネット広告市場規模は752億元に達する見通しで、前年の492.5億元から52.7%の増加となる見込みである。

インターネット広告は2011年に新聞広告を抜き、テレビ広告に次ぐ規模に成長した。高度成長の主因としてネットユーザー数の堅調な増加と、広告の費用対効果の高さが広告主に理解されはじめ、大規模な予算を割く企業が増えたことが考えられる。

2011年度の広告シェアでは、中国の検索エンジンシェアの8割以上を占める百度(BIDU)が首位で30.5%を占め、ECサイト首位の阿里巴巴集団(アリババグループ)が2位で17.4%、3位のグーグルが6.5%と続き、この3社で過半数を占める。

ネット広告は高い費用対効果が見込める事や少額から手軽に開始出来るメリットもあり、今後も急激な成長が予測され、2014年には市場規模が1640億元になると予測されている。

・オンラインゲーム:
オンラインゲームはインターネットをプラットフォームとして、各地の「ゲーマー」を繋ぎ、その高いインタラクティブ性と娯楽性によってネット普及に伴い若者に愛好されるようになり、業界の規模も急激に拡大してきた。特に中国では以下の要因により、オンラインゲームは中国市場で急速な発展を達成したと考えられている。

1、国内にはTVgameの市場が小さい(市販の製品は密輸品が多い)。
2、海賊版ソフトの影響により、PCgame市場(オフライン)の成長が遅い。

統計によると2003年の中国のオンラインゲーム市場規模は20億元であったが、2012年には464億元に達し、十年も経たないうちに20倍以上に拡大した。業界の専門家は2013年にオンラインゲームの市場規模が500億元を突破すると予測している。

オンラインゲームのユーザーID数は約3.25億個となり、ユーザーによる重複もあるため、正確には把握出来ないが、固有ユーザー数は約1.5~2億人と推測されている。

近年、スマートフォンの普及により、スマートフォン向けのモバイルゲームが急激に増加、特に10~20代のユーザー数が拡大しており、今後の成長ドライバーになると予測されている。

・マイクロブログ(微博)
微博(Weibo)は、「微博客」=「マイクロブログ(ミニブログ)」の略称で、個々のインターネットユーザーが、文字(140文字程度が一般的)や画像を投稿出来る。また、他人の投稿情報を閲覧、コメント、転送したりなどリアルタイムなコミュニケーションが可能なツールである。世界初の微博ともいえる「Twitter」は、2006年7月に提供が開始され、急速に世界中に広がり、2011年度にはユーザー数が2億人を突破したが、中国版の微博については2009年8月の「新浪微博」(ベータ版)より本格的な展開が始まり、2011年8月までの2年間で登録ユーザー数が2億人を突破するなど、本家のtwitterを上回るスピードでユーザー数が爆発的に増加している。

この爆発的なユーザー数増加の背景として、微博の以下のようなメリットが挙げられる。
① フォロワーとリアルタイムにコミュニケーションができる。
② 他メディアでは配信困難な画像、動画、音楽、ゲーム等のコンテンツの配信ができる。
③ 情報統制下にある中国で、信頼出来る情報を検閲により削除される前に収集できる。
等が挙げられる。

現在、中国では、四大ポータル(新浪、騰訊、捜狐、網易)全てが微博サービスを始めるなど、多くのサービスが登場しているが、なかでも「新浪(SINA)微博」及び「騰訊(QQ)微博」が二大微博となっている。

現在、微博は中華圏における商品やコンテンツの広告・PRプラットフォームとして、主要メディアのひとつとなり、国内外の企業・団体や著名人による積極的なプロモーション活動が行われているが、今後もネット普及率の上昇に伴い、利用者数の継続的な増加が見込まれる。

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